うつ病について
1. なぜ今、病気について記すのか?
先日メンタルクリニックの先生に診察をしてもらった際に、
「比較的調子の良い時に、家族や周囲の人へ自分の症状について伝えておくといいですよ」
とのアドバイスをいただいたので、実際にうつ病を患ってどんな感じなのかというのを書き出しておこうと思いました。
文章にして書いてみることで自分の中で整理ができますし、後から読み返してみることもできるので、取り留めなく話すよりもメリットがあるのではないかと考えています。
もちろん、人によってうつ病の症状は色々と違うものだと思いますので、ここに記載しているのはあくまで個人的な感想ということで、よろしくお願いします。
2. 具体的にどんな症状なのか?
Wikipedia先生によると、うつ病は下記のような症状が出る病気とのことです。
『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)の診断基準Aによれば、「ほとんど1日中、ほとんど毎日の」の抑うつ気分、あるいは興味、喜びの著しい減退のほか、「ほとんど毎日の」不眠あるいは過眠、易疲労性、精神の焦燥や制止、無価値感や罪の意識、思考力や集中力の減退、体重の減少や増加、反復的な自殺念慮などがみられ、診断基準Bが重症であることを要求している。
まあゴチャゴチャと難しいことが書いてありますが、私の場合ここに書いてある症状は(自殺念慮以外)ほとんど当てはまりましたので、一つずつどういう感じなのか書いていきたいと思います。
(1)抑うつ気分
私の場合は、気分に波があって、ずーっと一定の憂鬱感があるわけではありません。
特に投薬や休養といった治療を受けるようになってからは、気分が良い方向に戻る期間が増えてきていると思います。
しかし、特に前触れも何もなく、突然ガクッと気分が下がってしまう時があって、その時は本当につらいです。
それがどれくらい辛いかというと、適切でない例えかもしれませんが、あなたがとても可愛がっているペットが居たとして、自分の眼の前で衰弱して死んでいくのを、手も足も出せずにただ眺めているしかない場面を想像してみてください。
その時の気分の落ち込みを想像してもらえればいいかと思います。
大げさだと思われるかもしれませんが、ひどい時は本当にそれくらい、気分が落ち込んで目の前が真っ暗になるような、二度と幸せになれないかのような感覚に襲われます。それが特に原因もなく、数日続いたりします。
それが調子が良くなってくると、期末テスト前日の学生くらいの気分に落ち着くといった具合です。理由の無い憂鬱な気分は、ほとんど毎日あります。
(2)思考力や集中力が落ちる、精神の焦燥や制止
私の中では、「抑うつ気分」と同じくらい困っている症状です。
気分が落ち込んでいる時でも、健康な状態であれば周囲の人に「こんなつらいことがあって悲しい」という風に意思表示をすることができると思います。
しかし、私の場合うつ病による気分の落ち込みが大きい時には、「どういう風につらいか」を伝える言葉を考えることができなくなり、それを話すことが難しくなります。
クリニックの先生が、「比較的調子の良い時に」症状について周囲に説明するようアドバイスされたのも、この症状を考慮してのことだったのかな、と思います。
この症状のせいで、つらいからといって「実は今、気分が落ち込んでしまっていて、つらいんだよね」みたいなことが言えません。言いたかったとしても、ただひたすらに「何か言わなくちゃ!」という焦燥感だけが先行して、言葉が出ないのです。これは結構厄介です。
うつ病の人が周囲に助けを求められずに悪化して命を落とすのは、こういった症状も原因にあるのではないかと個人的に思います。言わなければいけない時に、言いたいことが言えないのは本当につらいことです。
(3)興味、喜びの感情がとても少なくなる
この症状は、治療のおかげで少しずつ改善してきています。
以前は楽しんで見ていたアニメが、見てもそこまで楽しくないとか、ゲームをしてもなんだか以前ほど楽しくないとか、そもそもそういう娯楽に興味がなくなるとか、そういう感じです。
健康な人目線だと、「せっかく長く休んでるんだから気分転換でもしてみたら?」というふうに思う方も多いんじゃないかと思います。
しかし、プラスの感情がなかなか湧いてこないという状況で、気分転換をする気持ちになるのは結構大変なことです。
一方で、プラスの感情をある程度感じやすい、比較的調子の良い時に以前興味があったものに触れてみるとか、そういう機会を作るのはとても大切だと思います。
実際、私も妻の勧めで旧車のイベントに行ってみたり、近場に旅行したりしてみて、「行ってみてよかったな」と思うことはたくさんありました。体調と相談しながらであれば、こうした試みはやってみるべきと思います。
(4)無価値感や罪の意識
うつ病の症状がひどい時には、普通ではありえないような思考をすることがあります。
「こんな簡単なことすら出来ない自分に価値はないので、いなくなった方がいい」
みたいな、普通の状態だと「なんでそうなるの?!」と思うようなことなのですが、実際私も経験があります。
この場合に周囲の方がやってはいけないのは「そんな考えは間違っている」などと正論をぶつける行為だと思います。
普通の考え方が出来ていない状態なので、「間違った考えを持っている自分が悪いんだ、自分は生きていてはいけないんだ」みたいな危ない方向に考えが行ってしまっても不思議はない状況です。
これは個人的な意見ですが、そういう意識に苦しんでいる時は、励ましの言葉は要りません。何も言わずそっと見守っていてほしいと思います。
(5)疲れやすい(易疲労性)
これは休養に伴う運動不足で体力が減っていることもある程度関係しているのかもしれませんが、それを差し引いても疲れやすさが出るのは事実です。
私の場合、比較的調子が良いと思う時でも、ちょっと散歩に出るとか、ちょっと知らない人と話をするとか、そういうことの後にやってくる疲労感が割り増しになるような印象です。
疲労感が引き金となって気分が落ち込むおそれもあるので、調子がいい時もなるべく無理をしないように心がけています。
(6)不眠・過眠、食欲不振(体重の増減)
この症状は、周りから見ていてもわかりやすい症状の一つだと思います。
おかげさまで休養してから食欲はだいたい元に戻ってきていますが、もともとあった不眠の症状が、今は過眠になっているという状況です。(クリニック初診の頃は食欲がなさすぎて、一時は5kgくらい体重が一気に減りました)
「うつ病の治療には朝日を浴びるのが効果的」などと言われますが、朝起きられない症状はなかなか良くなりません。疲れやすさと並んでしつこい症状だと思います。
私の場合、気分の落ち込みがひどい時には不眠の症状がぶり返しました。不眠の場合は寝付けないことに加えて、早朝に何度も起きてしまう症状もあり、「寝ないといけないのに!」という焦燥感に駆られて余計に眠れなくなるという悪循環に陥ってしまいがちです。
3. 症状を踏まえて、周囲の方々へのお願い・おわび
(1)口数が非常に少なくなることがあります。
気分の落ち込みが来ている可能性が高いので、申し訳ありませんが、無理に話さずにそっとしておいてください。もし何かを確認したい場合は「はい」か「いいえ」で答えられる質問にしてもらえると大変ありがたいです。
(2)快諾していたお願いごと・約束ごとを、果たせないことがあります。
調子が良い時には普通にできることが、急に気分が落ち込んでしまい、できなくなってしまうことがあります。申し訳ありません。
約束ごとやお願いごとをされる時は、「調子が悪くならなければ」という条件付きであることをご了承ください。
(3)さいごに
なかなか口に出して言えませんが、家族や友達、関わっている全ての方々には、日頃から本当に感謝しています。特に妻には、感謝してもしきれません。
まだ症状をぶり返すこともありますが、治療前から見ればずいぶんと症状が改善していると思いますし、今回文章にして書き出してみることで、症状の改善を実感できて本当に良かったなと思います。
今後も各方面からサポートをいただきながら病気と向き合い、また以前のように普通の生活ができるように、少しずつでも前へ進んでいければと思います。
ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
なお、うつ病については、以下の動画が割と面白かったので貼っておきます。
(話題はうつ病に関する研究の内容だけでなく、日本における女性の地位の低さなど多岐に渡っています)